“運命”の分配ドラフトから1年
球界再編問題で大きく揺れた2004年。
その対象チームとなった大阪近鉄バファローズ、そして、オリックスブルーウェーブのファンにとって、忘れられない1年でした。
大阪ドームでの近鉄vsブルーウェーブ最終戦の日に、合併が正式決定したこと。
大阪ドームでの、近鉄最後の試合。
Yahoo!BBスタジアムでの「近鉄球団」「ブルーウェーブ」最後の試合。
藤井寺球場での「石渡軍団」最後の試合。
「Kintetsu」「Bluewave」のユニフォームを着て、最後の全体練習。
“区切りの日”といえる日はたくさんありますが。
2004年11月8日。
大阪近鉄バファローズ・55名、オリックスブルーウェーブ・52名、計107名の選手が、
2つのチームに分配されました。
この名簿を見て、何も感じなかった近鉄ファン、ブルーウェーブファンは、いなかったと思う。
私が、この日の夜、この名簿を見た瞬間。
涙もない。
絶望感もない。
空虚感もない。
ただただ、呆然と、この名簿を眺めていました。
中村勝広GM(当時)が語っていた「娘を嫁にやるような心境」とは、こういうことなのか、と。
この名簿が発表された瞬間。
「大阪近鉄バファローズ」「オリックスブルーウェーブ」というチームは、なくなってしまったのです。
「2つの道」に引き裂かれた青波の勇者たち
わがオリックスブルーウェーブからは、13名の選手が、分配ドラフトによって楽天イーグルスに移籍しました。
つい最近まで彼らは、ブルーウェーブのユニフォームを着て、Yahoo!BBスタジアムで躍動していたんですよ。
そんな彼らが、自分たちの目の前から去ってしまうなんて・・・そう思ったことを覚えています。
ムードメーカーとして欠かせなかったカネさん。数日前のチャリティーオークションでは進行役をつとめていました。
たった1年しかいなかったのに、なぜか「Bluewave」のユニフォーム姿が板についていたタニチュー。
生え抜きじゃないのに、ずっとブルーウェーブにいたんじゃないかって思えるくらい馴染んでいたトカ。
“強かった頃のオリックス”を知る生き証人のコバヒロさん。「ブルーウェーブ」の象徴のような選手でした。
黙々と投げ続けるその姿勢が印象的だったオグさん。彼も生え抜きじゃないのに、青波イメージが強いです。
とにかくデカくてパワー満点、それだけで記憶に残ってしまう徳元。うまいと評判の歌唱を、一度聴きたかった。
サーパスで熱心に練習に励む姿が記憶に鮮やかな高橋。一度は一軍で見たかった。
一度はチームを去ったが、一回り強くなって、阪神からブルーウェーブに戻ってきた斉藤。
とにかく小さくて軽快な身のこなし、それだけで記憶に残ってしまう大島さん。
ユーティリティプレーヤーとして貢献度が高かった佐竹。2番まである応援歌は期待のあらわれでした。
積極的に先頭に立って、若手を引っ張った竜太郎。将来はリーダーになって欲しかった。
ルーキーイヤーの1年間しか在籍できなかった小島。
一軍デビューを果たしたばかり、これからも成長を見届けたかった中島。
若い高橋・小島・中島以外は、各スポーツ紙の直前予想でも候補に挙がっていましたし、覚悟はある程度できていました。むしろ、もっと多い人数が出ていってしまうんじゃないのかと思うくらいでした。
しかし、人数の問題じゃない。
在籍期間は違えど、一人ひとりが、大切な「ブルーウェーブ戦士」です。
そんな彼らが、別々のチームに振り分けられるなんて。
自分がこれから応援しようとしている統合新球団・オリックスバファローズ。
自分にとってはライバル球団となる東北楽天ゴールデンイーグルス。
どっちにも、自分が今まで応援していた選手が在籍しているんですよ。
名簿を見た瞬間の心境は、本当に、筆舌に尽くし難いです。
分配ドラフトが残したもの
そして、2005年。
楽天イーグルスは、話題にもなり、ファンにも恵まれ、そういう意味ではいい1年目でした。
新生バファローズは、お客さんも少しは入り、予想以上に勝てましたし、いい意味で下馬評を覆しました。
2球団の解散・消滅と引き換えに誕生した、合併球団と新設球団は、それなりの成果を得ることができました。
そして、それぞれの「新天地」に在籍した猛牛戦士・ブルーウェーブ戦士、
彼らにとっても、意味ある1年だったと思う。
楽天への移籍を機に、奮起して良い結果を残すことができた選手。
楽天に移籍したが、力を発揮することができなかった選手。
バファローズに残留して、勝利に貢献することができた選手。
バファローズに残留して、期待を大きく裏切った選手。
そして、新天地が自分にとって「良かった」といえる選手、そうでない選手。
進んだ道、残した成果は、人それぞれ。
でもね。
そういう問題じゃないんですよ。
大阪近鉄バファローズ、
オリックスブルーウェーブ、
それぞれのチームで、それぞれの選手同士で、培ってきた固い“絆”。
この“絆”が、あの分配ドラフトで、真っ二つに引き裂かれてしまったんですよ。
これだけは、もう、永遠に取り戻せない。
どんなに楽天がいいチームになろうが。
どんなに新生バファローズが強くなろうが。
もう、二度と、「近鉄球団」と「ブルーウェーブ」は戻ってこないんですよ。
“失ったもののほうが、はるかに大きい”その思いだけは、永遠に消えることはない。
そのことを、忘れないでいて欲しい。
一度“絆”が引き裂かれたら。
もう、永遠に、取り返しはつかないのだ。
“東北楽天ゴールデンイーグルス”そして“オリックスバファローズ”のような球団は、
未来永劫、二度と、できてしまってはいけない。