今までありがとう。北川博敏の2006年の雄姿を、俺たちは永遠に忘れない

今日のソフトバンク戦(ヤフーD)が、北川博敏内野手にとって、2006年最後の公式戦出場となりました。
北川のユニホーム姿を見ることは、今季はもうありません。



8月17日木曜日に、神戸市内の病院にて、右肩の関節鏡による手術を行うこととなったからです。
手術が終わった後も、長期にわたるリハビリを控えており、
公式戦で北川の姿を見ることができるのは、早くても2007年の開幕戦になります。



故障の発端となった怪我を負ったのは、5月30日の中日戦(スカイマーク)のこと。
6月21日の検査で「右肩関節唇損傷」という選手生命にかかわる重傷であることがわかりました。
普通なら、この時点で戦列を離れ、手術を受け、じっくりとリハビリをおこなって、
万全のコンディションにすることを優先するはずでしょう。



しかし、北川は試合に出場し続けた。



今季、故障を抱えているバファローズの選手は、北川だけではありませんでした。
怪我の影響で、バットを握ること、グラブを持つことすらできない選手もいる。
バットを振りぬくことが困難な選手もいる。
球を放ることを制限されている選手もいる。
グラウンドを駆け回ることができない選手もいる。
それどころか、グラウンドに立つことができないほどの重傷を負った選手もいる。
ほとんどの主力選手は、今季は必ず一度は重傷もしくは軽傷を負って、
戦列を離れたり、ベンチに入っていても試合出場を控えるということを、一度は経験しています。
開幕当初に中村監督が思い描いていたベストメンバーで試合ができたことは、結局、一度もありませんでした。



そんな中、北川はチーム最多の100試合に出場(13日現在)
打席数もチーム最多となるほど、継続して試合出場を続けました。
しかも特筆すべきこととして、ほとんどの試合で一塁手としてスタメン出場していること。
守備・打撃・走塁とすべてにおいて、北川は怪我を抱えながら、全力でプレーをし続けたのです。



グラウンドに出るすらできない選手が多く、
これ以上サーパスから選手を引き上げたらサーパスが人数不足で試合ができなくなってしまうほど選手が足りない、
そんな状況で、ギリギリまで北川に頼らざるを得なかったチーム事情もあるでしょう。





本来なら早急に故障の回復に努めなければならない北川を、
そういった事情から、戦列に残すことを決意し、起用を続けざるを得なかった中村監督はじめ首脳陣の心労も、
相当なものであったことと思います。



このたびの北川に対する対応は、球界では今までに例がなかったことです。
選手生命に関わる重傷なのに試合出場を続けるというのは、あり得ないことです。
これは、起用する監督もつらいでしょうし、何より、選手の皆さんもつらいと思います。
一塁手の北川が肩を痛めていると分かっていて、
それでも、一塁手である北川に送球をしなくてはならない。
投手は北川に牽制球を投げなければならない。
見ている私たちもつらかったです。
北川がそういう怪我を負っているということは、もう知っていますから、
そんな中で打撃だけじゃなく、捕球や送球の機会が多い一塁に、全力で取り組んでいる姿を見るのは、
本当に、つらかったです。
そして、8月7日の「8月13日を最後に、手術を理由に戦列を離れる」という公式アナウンス。
まだ消化試合でもなんでもない、優勝の可能性が残っているこの時期、
そんな公式戦真っ只中に“北川は残りあと○試合”などというカウントダウンをしている私たち。
こんなの、前代未聞ですよ。





重傷とわかった時点で、戦列から外すべきだったのか、どうか。
今となってはわかりません。



もしも、北川に頑張ってもらったおかげで、プレーオフに進出することができたとしても。
北川はもう、優勝争いの輪の中にはいないのです。
優勝することができたとしても、北川はその瞬間に、グラウンドにもベンチにもいないのです。
歓喜に沸くスタジアムに、居合わせることは、できないのです。
そう考えれば、ギリギリまで北川の試合出場期間を引っ張ることは無意味かも知れない。
しかし、怪我をした時点で北川を戦列から外したとしても、
北川の復帰は、プレーオフにも日本シリーズにも間に合わないでしょう。
それだけ、一度手術をしてしまうと、回復には時間はかかる重傷なのです。




どんな選択肢を口にしても、
すべては「たら」「れば」でしかないのです。





皮肉にも、重傷が発覚してから、北川の打撃成績は急速に上昇しました。
今まで以上にチームの勝利に貢献して、たくさんお立ち台に上がりました。
さらに、守備も、走塁も、いっそう積極的に取り組んでいます。
チーム全体としての、北川の貢献度の占めるウエートが、多くを占めている現状。



ますます、北川とのしばしの別れが、寂しく思います。
チームへのあらゆる面での影響も心配です。





このたびの北川の起用については、本当に、さまざまな波紋を呼びました。
いろんな意見があると思います。





しかしながら、そんな北川が、いざ打席に立つと、大きな期待を寄せる私たちがいたのも事実。
北川が期待通りに好プレーを多く魅せてくれて、
たくさんの感動しましたよね。
楽しかったですよね。
2006年のバファローズの野球を面白く見ることができたのは、
北川のおかげでもあるのです。



もはや、私たちは、誰に対しても責めることはできないのだ。



今はひたすら、北川の手術の成功と、リハビリの健闘を心より祈るしかありません。



そして。
北川がここまで積み上げてくれたもの、チームに残してくれたものを、無駄にしないために。
2006年の残りを、精一杯に戦おうじゃありませんか。






北川選手、そして、北川に関わったすべての人たちに、私は素直に敬意を表したいです。
北川がああいう状況とわかっていながら、ともに戦ってくれたチームメイトの皆さん。
対戦相手だけでなく、多大なる心労とも戦ってくれた中村監督。
そして、重傷を負っても今まで以上の全力プレーを魅せてくれた北川選手。
多くの苦しみから生み出された喜びを与えてくれた皆さんに、心より感謝したい気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。