俺たちは“優良助っ人”ガルシアを、永遠に忘れない

カリーム・ガルシア外野手の、今季限りでの退団が、正式に発表されました。



ガルシアの戦力外通告については、夏頃の時点で、すでに一部新聞紙上で報じられていました。
家庭の事情などで、一軍登録を抹消されていた頃でした。
そして、ガルシア自身も、そういう報道がされていることはわかっていました。



ガルシアがすごいところは。
自分がそういう微妙な立場にあることを自覚しながら、モチベーションをまったく切らさなかったことです。
サーパスで若い選手に交じって、夏の暑い日差しの下で汗を流し、一軍再昇格に向けてアピールをし続けました。
8月11日に、再び出場選手登録されてからは、一軍選手枠にかじりつき、登録抹消されることは最後までありませんでした。
同じ外国人野手のブランボーグラボースキーが相次いで、
公式戦終了を待たずに「今季の出場機会なし」とみなされ、帰国していく中、
ガルシアだけは、最終戦まで試合出場を続け、最後までその闘志溢れるプレースタイルを貫き通しました。

9月27日。スカイマークスタジアムで行われた今季最終戦のこと

試合前のシートノック。
ライトの守備位置―――つまり、私たちバファローズファンが陣取るライトスタンドの前―――には、
ガルシアと大西がいました。そのときのこと。
ガルシアは、ユニフォームのポケットからカメラを取り出し、大西に手渡して・・・・・
なんと、私たちライトスタンドのファンをバックに、記念写真をとってもらっていたのでした。





と、いうことは。



ガルシアは、この時点で
“日本でやるのは、今日で最後”
ということが、わかっていたのかも知れない。





試合終了後。
ガルシアが、ベンチ前で選手一人ひとりと抱き合う姿が印象的でした。
今思えば。
“2年間、楽しかったよ。今までありがとう!”
そういうメッセージだったのかも知れない。








以上のことから憶測して。
結局、後半戦にどんなに頑張っても、ガルシアが“今年限り”というのは揺るがなかったのかも知れない。
だとすれば、ガルシアの姿勢は見上げるばかりだ。
自分のことより、チームの勝利、ファンを喜ばせることに貢献したということなのだから。
これこそが「プロ野球選手」として、あるべき姿勢ではないか。





ガルシアのハイライトシーンとして、2005年8月の「2試合連続3本塁打」を挙げる人も多いと思うが、
自分はそうじゃないと思う。
どんなに勝てなくても、どんなに打てなくても、「勝ち」にこだわり続けた“2006年後半戦”こそ、
ガルシアがもっとも力を尽くしたシチュエーションだったのでは、と思っています。





私利私欲を一切捨てて、チームのため、ファンのために、
あの長く苦しい道のりだった“2006年後半戦”を精一杯に戦い抜いたガルシアは、
オリックスバファローズ球団史上、一番の“優良”助っ人なのだ。

ガルシアの“存在感”

とにかく、ガルシアはどんなことに対しても「徹底的に」やる選手でした。
オープン戦で、どんなに雪が降って寒くても、半袖を貫いたことは、今となっては懐かしい思い出です。
打席に立つときは、必ず帽子とヘルメットを重ねて被ってました。
ライトの守備につくときには、1イニングに必ず1個はライトスタンドへボールを投げ入れてプレゼントしていました。
ボールの投げ入れを毎回やるのは、さすがにやり過ぎじゃないかと思ったのですが・・・・・
それも、何事も徹底的にやるガルシアの姿勢の表れなのでしょう。



もちろん、プレースタイルも「徹底的」で、とにかく闘志を前面に押し出しました。
打撃では長打力を存分に見せつけ、ホームランを量産したこともありました。
走塁でも一切手を抜かず全力で走り、つねに先の塁を狙っていました。しかもかなり速かった。
守備では、どんな難しい打球にも必死で食らいつき、内野への矢のような送球も魅せてくれました。
パワーが漲るプレーは、見ている私たちも気持ちいいですし、チームメイトも刺激になったでしょう。



また、自身が出塁したあと、つぎの打者が併殺打になってチェンジになったとき、
悔しさのあまり、塁上からヘルメットをベンチに向かって投げつけた姿は、今でも忘れられません。



とにかく、何でも「徹底的に」やった選手だった。
だからこそ、その“存在感”も、群を抜いていた。
だからこそ・・・・・



チームから去ってしまうことは、素直に“寂しい”です。
「心にポッカリ穴が開いた」とは、このことを言うんだな、というのが心から実感できます。





ガルシアが戦力外になったことについては、何とも言えません。
本人より、代理人の意図も大きく絡んでいると思うからです。
昨年オフ、2年目に向けての交渉がまとまらず、一度は自由契約になり、
キャンプの前にやっと“再契約”という形で2年目を迎えたことからもわかります。
もはや、真相はわかりません。何を考えても、憶測の域を出ることはありません。
そんなことよりも・・・・・
むしろ、この2年間のガルシアの頑張りに素直に敬意を表する、
それで充分ではないか。





こんな素晴らしい選手を、2年間、ライトスタンドの目の前で観ることができた自分は、
とても幸せだったと、今更ながら思っています。





これからも、世界のどこかで、ガルシアは頑張り続けるだろう。
自分はそう信じています。